技術紹介(橋梁)
バウンダリーチェッカー
コンクリートや塗膜をはつらずに構造物の腐食劣化と健全度を診断します。
日本ファブテック(株)は、鋼部材とコンクリートとの境界部(地際部)の健全度診断を行うため、
合理的・経済的な非破壊測定データを基にした腐食劣化評価手法※1を開発しました。
※1:九州大学 建設設計工学研究室、日本電測機株式会社との共同研究
腐食損傷事例と今後懸念される構造部位
下路トラス橋の斜材とコンクリート床版との境界部や鋼製橋脚基部に著しい腐食損傷が数多く報告されています。これら地際部の腐食は、腐食速度が著しく速く、コンクリートに埋設された「見えない箇所」にも生じる可能性があります。同様の部位は、鋼アーチ橋の鉛直材、波形鋼板ウェブPC橋(埋込みタイプ)や複合トラス橋などにもあり、コンクリートや塗膜をはつらず、構造物を傷めることなく検査できる方法が望まれています。
腐食発生メカニズム
地際部に雨水や凍結防止剤が長期間停滞することで、地際部の塗膜は比較的早期に劣化します。塗膜が劣化すると、鋼材の露出部と埋設部には腐食環境の差異により電位差が生じ、腐食電流が流れます。このマクロセルによる地際腐食は、酸化反応が生じるアノードと還元反応が生じるカソードが固定化するため、他の腐食に比べて腐食速度が極めて速く、局部的に部材断面を欠損させます。
腐食検査システムの特徴
- 渦流探傷の腐食センサが、電磁誘導作用により腐食減肉を電圧変化として捉えるため、非接触による非破壊検査が可能。
- 独自開発の推定手法を用いることで、鋼部材がコンクリート等に埋設された「見えない箇所」の残存板厚と腐食位置(境界から20mm範囲)が推定可能。
- 電磁誘導作用を用いた非接触検査のため、煩雑な前処理作業(コンクリートのはつり、さび・塗膜除去)が不要。
- 構造物を傷つけずに検査が可能なため、検査後の後処理作業(コンクリートの復旧、検査面の再塗装)も不要。
- コンクリートのはつり作業および塗膜や浮きさびの除去とその復旧作業が省略できるため、安全性、施工性の向上と周辺環境への影響低減が図れる。
- 独自開発の非接触自動探傷装置を用いることで、検査結果が検査員の技量に依存せず、連続して計測したデータを自動で記録できるため、経済性と品質の向上が図れる。
- 検査結果を用いて、腐食劣化診断や健全度評価(疲労耐久性)、残存寿命の予測が可能。
渦流探傷による非破壊測定・検査・評価プロセス
検査・診断事例
角形鋼製橋脚基部 □1.2m×1.2m~3.5m×3.5m |
5件 |
円形鋼製橋脚基部 □Φ2.5m~3.0m |
2件 |
RC橋脚鋼板巻基部 □0.9m×0.9m~1.4m×1.4m |
2件 |
道路照明柱基部 □150mm×150mm~190mm×190mm |
1件 |
2020年4月現在
検査時間
角形鋼製橋脚□1.5m×1.5m
検査延長6m
- 5mm間隔
- 4時間
- 25mm間隔
- 1時間
※現場状況に応じて異なります。
角形鋼製橋脚基部
(大型自動探傷装置使用)
道路照明柱基部
(中型自動探傷装置使用)
円形鋼製橋脚基部
(小型手動探傷装置使用)
RC橋脚鋼板巻基部
(小型手動探傷装置使用)
推定値の検証
バウンダリーチェッカーによる平均腐食深さの推定結果と実測結果を比較すると精度が±30%注)となっています。
(注:腐食損傷の状況により異なる可能性があります。)