技術紹介(橋梁)

橋梁の長寿命化をサポートする伸縮装置『N-FCフィンガージョイント』

特許登録済 第5834033号

非排水機能の要となる止水材を守り、積雪寒冷地での橋梁桁端部の早期劣化を防止します。

日本ファブテック(株)は、鋼製フィンガージョイントの止水材の劣化・機能低下を抑制する、フィンカバー付き橋梁伸縮装置を開発しました。

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鋼橋の腐食原因

鋼橋の腐食の原因となる「水じまい」の良し悪しは、鋼橋のLCCに大きく左右します。特に、積雪寒冷地においては、冬期交通の安全性確保のため、腐食促進因子である凍結防止剤を散布することから、「水じまい」への配慮が非常に重要であり、鋼橋の長寿命化を図るためには、伸縮装置からの漏水防止が喫緊の課題となっています。

止水材の劣化メカニズム

従来のくし形フェースプレートでは、土砂や雪氷が除雪車等の通過によって、くし歯のすき間に押込まれます。
この押込み力が止水材に作用し、止水材の劣化・止水機能の低下を引き起し、漏水による支持金具の腐食や鋼桁端部腐食の一要因となっています。(図-1)

図-1

鋼橋の腐食原因

N-FCフィンガージョイントは、押込み力の軽減に付与するフィンカバーを追加した鋼製フィンガージョイントです。(図-2)
また、既設供用後の橋梁下面からの定期点検や止水材取替え時の作業性に考慮した構造としています。

図-2 N-FCフィンガージョイント構造概要

設計

伸縮継手としての設計は、鋼製フィンガージョイントの従来の設計手法と変わりません。はじめに、主桁の温度変化による移動量、活荷重たわみに伴う回転移動量、地震時の移動量を算出し、設計移動量および桁遊間を決定し、フィンガー長、ウェブ遊間を算出します。次に、衝撃を考慮した活荷重(T荷重)でフェースプレートの厚さを決定します。

フィンカバープレートは、フェースプレートのくし歯のすき間を埋める形とし、タイヤ接地面積比のT荷重(衝撃を考慮)で厚さを決定します。タイヤ接地面積比とは、最低温度時でのT荷重面積(500×200)に対するフェースプレートとフィンカバープレートの面積比です。

フェースプレートとフィンカバープレートは、活荷重たわみによる桁端の回転で干渉しないように、テーパー加工を行い、加工後に必要板厚が確保されるようにしてあります。

特徴

特徴① フィンカバー

フェースプレートの下面側にフィンカバーを追加し、くし歯のすき間を狭めます。これにより、すき間に入り込んだ土砂・雪氷等が止水材に達する割合を最低温度時(-20℃)でも15%以下に低減でき止水材の劣化を防ぎます。(図-3)

図-3 N-FCフィンガージョイント(S-type)の効果
(設計基準温度10℃・最低温度-20℃の例)

特徴② 疲労耐久性

常時の輪荷重に対しては、フェースプレートのみで抵抗します。
実物大の試験体を用いた疲労試験で50年以上の疲労耐久性(NEXCO設計要領の疲労耐久性評価)を確認しています。 (図-4, 5)

図-4 疲労試験状況

図-5 フィンガー付け根の応力履歴

特徴③ 止水性

NEXCOの構造物施工管理要領に基づいた試験に合格した止水材を採用することで、止水性を確保します。 また、ユニット継手部を設けた試験に合格し、50年相当の耐久性を確認しています。 (図-6)

※S-typeの試験体で確認

特徴④ 維持管理性

乾式止水材・支持金具・止水ゴムは、桁下から脱着可能な構造を採用することで、漏水が生じた場合でも容易に取替作業が可能であり、維持管理性に配慮しています。 (図-7)

図-6 止水性能確認試験状況

図-7 乾式止水材取替え概要

製品ラインナップ

様々な設計伸縮量に対応できるように4タイプの製品を用意しています。伸縮装置の交換にも対応できるように1mほどのユニット単位での販売も可能です。

製品タイプ S-type M-type L-type XL-type
伸縮量 80 (±40) 140 (±70) 220 (±110) 280 (±140)
フェースプレート厚 t1 36 45 55 60
フィンカバープレート厚 t2 19 25 32 32
標準遊間 A 200 290 410 500
最大遊間 Amax 240 360 520 640
  B 395 440 475 495
  C 185 200 217 222
  E 130 190 270 330
  F 85 85 120 130
  G 85 130 130 140
  h 235 260 280 285
伸縮装置総高 H 290 330 367 377
フィンガー長 L 115 175 255 315

施工実績

つがるこ線橋(青森県 津軽自動車道五所川原西バイパス)

橋梁形式:
3径間連続鋼箱桁
橋長:
139.0m
幅員:
11.3m
最大支間:
52.7m
発注者:
国土交通省 東北地方整備局
供用年月:
平成26年11月

橋梁全景

橋面状況

FCフィンガージョイント(表面)

フィンカバー(裏面)

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